研究概要 |
暖地条件下における温帯果樹リンゴ樹の発芽誘導に関する実験では、リンゴの花が頂芽に着くので、開花についてのみ考えれば,摘葉と云う人工的な落葉で発芽は十分に行なわれる.しかし,単に頂芽と云っても,新梢には長,中,短果枝と枝の長さに違いがあり,頂芽以外の側芽からの葉芽の発芽も必要であり,頂芽以外の芽の発芽に関しては摘葉のみでは不十分であったことから,発芽誘導には落葉によって生じる芽や枝の内部における初期の変化だけでは完全ではなく、その後に必要とされる要因の検討が必要と考えられた。 わい化剤paclobutrazolを前処理してから落葉を伴う休暇打破剤 Calcium cyanamideを処理した結果,わい化剤を前処理しなかったものに比べて,発芽誘導は低く抑えられ,また,発芽はみられてもその芽から新梢の伸長は殆どみられなかった.休眠打破剤である hydrogen cyanamide(Dormex)およびCalcium cyanamideに葉面散布剤 Meriteを混合して処理するとどの時期の処理でもかなり高い率で発芽誘導がみられた. リンゴの新梢の上の摘葉は休眠状態がある程度浅い頂芽の発芽を誘導することは出来るが,ある程度休眠状態の深い頂芽を誘導することは困難であった.しかし,摘葉+摘芯処理だけより腋芽の発芽率が高く,またその発芽時間を早めたことから摘葉処理には頂芽優勢を解除する働き,およびその時間を早める働きがあると推察された。 摘葉や摘応処理後に発芽をみた部位の芽においては処理後にzaatin riboside(ZR)含量が無処理より増大し,外生的にサイトカイニン様物質を処理して腋芽の発芽を誘導できることを強く裏付ける結果をえた.また,摘葉や休眠打破剤処理でその後に発芽のみられた新梢の芽では,処理後48時間以内にポリアミン含量の増大がみられ,特にスペルミジンとスペルミン含量の変化が大きく,これらが発芽誘導に大きく関与していることが伺われた。
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