研究概要 |
1.本邦沿岸域に赤潮として出現する15種の鞭毛藻類と2種のカイアシ類の摂食による相互関係を調査した。渦鞭毛藻類のGymnadinium nagasakiense,ラフィド藻類のOlisthodiscus lutens,Heterosigma akasiwo,Chattonella marina,Fibrocapsa japonicaは、カイアシ類Acartia omorii,Pseudodiaptomus marinusにほとんど摂食されなかった。本邦で初めて拒食性の鞭毛藻類が存在することが明らかになった。拒食の原因としてこれらの鞭毛藻類の細胞中にカイアシ類の拒食を誘発する短命な生理活性物質が含まれることが確かめられた。従ってこのような拒食性の鞭毛藻類による赤潮の消長には動物プラントクンによる摂食圧は効果がないことが推定される。 2.大型カイアシ類Calanus sinicusは前述の2種のカイシア類に比較して、拒食性の鞭毛藻類を摂食する場合が多く、カイアシ類の種類が異なることにより、拒食の程度が変化することを示唆した。摂食行動の詳しい観察により好適な植物プランクトンを摂食する時は、数-10分間隔でフィ-カルペレットが排出されることが明らかになった。しかし拒食に伴う嘔吐行動は観察されなかった。 3.微細なスケ-ルで海洋構造が異なる沿岸フロント域で、植物プランクトン、懸濁粒子の分布と海況要因との関係を調査し、栄養塩の供給の盛んなフロント混合域側で顕著に高いクロロフィル濃度が観察され、動物プランクトンの分布とは独立して赤潮発生がありうる可能性を示唆した。 4.瀬戸内海に出現する浮遊性Calanoidaカイアシ類の消化管内容物を精査することにより、カイアシ類が天然条件下では多種多様な植物プランクトンを摂食することが明らかになった。また種によってはある特定の植物プラントングル-プを全く摂食しないことが観察され、実験室でみられたカイアシ類の拒食現象が野外でも同様に起っていることを示唆した。
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