研究概要 |
(1) 主要養殖魚(ブリ,マダイ,アユ,ウナギ,コイ,ニジマス)およびティラピアとチョウザメについて,各薬物代謝酵素の温度・pH特性を調べたところ,最適温度はそれぞれの生息適水温を反映したが,最適pH値については,魚種間に一定の傾向を認めなかった。 (2) ブリ,ニジマス,コイにおいて薬物代謝酵素,特に芳香族炭化水素水酸化酵素(AHH)の活性は季節的に著しく変動した。 (3) 魚類の薬物代謝酵素の活性には近縁魚種間でも顕著な差が認められること,また,一般に魚類の本酵素活性は哺乳類の1/5〜1/10に過ぎないが,PCBや或種の医薬品によって容易に誘導され,特にAHHの活性は哺乳類のそれを超えるレベルに達することを明らかにした。 (4) ブリ,マダイ,アユ,コイ,ニジマスを供試し,それらの薬物代謝酵素活性と,病魚に多用されているオキソリン酸(OA),チアンフェニコ-ル(TP),オキシテトラサイクリン(OTC)の体内持続性との関係を調べ,各供試魚のAHHおよびグルクロン酸抱合酵素の活性とOAの体内持続性との間に強い相関を認めた。 (5) その相関性を同一魚種で確認するため,予めPCB投与によってAHH活性を対照魚の18倍に誘導したコイにOAを投与し,OAの体内最高濃度および体内持続期間が対照魚の1/2〜1/3に減少することを実証した。 近年,養殖対象魚種が著しく増加してきたが,医薬品の投与規制対象魚は生産量の多い7魚種に限定されており,生産量の少ない魚種については,規制魚種における投薬基準が参考にされている。しかし,近縁魚種間でも薬物代謝酵素活性に顕著な差が認められ,またそれらの活性は季節的にも変動する。本研究は,養殖魚に対する医薬品の有効な投与法および適正な休薬期間の設定に当たり,薬物代謝酵素活性が迅速かつ経済的な指標として有用であることを実証したものである。
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