1.HIV感染に感受性を示すヒト白血病由来株細胞を用いて、多様な型の不完全HIV粒子を持続的に産生する細胞クローンを分離することに成功した。得られたクローン細胞の約1/3は、明らかな遺伝子欠損を持つHIV遺伝子を持っていた。これらのクローン細胞の中には、正常な感受性HIV粒子には認められない生物学的活性、特に多核巨細胞形成能が極めて強い不完全粒子を産生するものがあった。また、gag及びpolなどのコア蛋白を含まず、env蛋白のみから構成される不完全HIV粒子産生クローン細胞を用いた実験から、感染性のある完全HIV粒子による初感染を受けた細胞は細胞傷害により死滅するが、ゲノムに欠損等の変異を持つ不完全HIV粒子による初感染を受けた細胞は傷害されずに生き残り、やがて不完全HIV粒子産生持続感染細胞になること、更にこの持続感染細胞には感染性HIV粒子による重感染を受けることにより細胞傷害を受けずに感染性HIV粒子産生持続感染細胞になることを見出した。 2.HIV gag蛋白、p24及びp18、pol蛋白、p661/p51(逆転写酵素)に対するマウスモノクローナル抗体を作成した。これらのモノクローナル抗体を用いた膜蛍光抗体法及びラジオイムノ法により、HIV感染細胞の細胞表面にgag p24及びp18抗原が発現していることを見出した。しかし、これらの方法で調べる限りpol p66/p51抗原の発現は見出すことができなかった。 3.HIV感染時の細胞レセプターとして働くCD4蛋白について、合成ペプチドを用いて解析した。HIV env gp20蛋白と反応する領域として、CD4分子435のアミノ酸から成る蛋白の内、アミノ酸残基70ー132の計63個のペプチドを固定した。
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