研究概要 |
細胞は外界から種々の刺激を受けると受容体を介して細胞内に特異的情報を伝達する。βアドレナリン受器体刺激はアデニレ-トシクレ-ス系を介して情報を伝達する。それに対してαアドレナリン受容体刺激やムスカリン受容体刺激などの刺激はこれとは別にイノシトールリン脂質の代謝回転によって情報伝達することが明らかにされてきた。ホスファチジルイノシト-ル特異的ホスホリパ-ゼC(PIーPLC)はその中心的役割をはたす酵素で、イノシト-ルリン脂質(PI,PIP,PIP2)を迅速に分解し、ジアシルグリセロ-ル(DG)とイノシト-ル3リン酸(IP3)などのイノシト-ルリン酸を生成する。DGとIP3はそれぞれセカンドメッセンジャ-としてCキナ-ゼ(PKーC)の活性化、細胞内Ca^<2+>の遊離をもたらすことが知られている。(145)IP3はIP3キナ-ゼにより(1,3,4,5)IP4にリン酸化され、さらに(1,3,4)IP3に脱リン酸化される。IP3、IP4は共に細胞内Ca^<2+>濃度調節に関与すると考えらている。心筋肥大発生機序を解明するために、α受容体、G蛋白およびPI代謝を介した情報伝達制御機構を肥大心筋にて検討することにある。PIーPLC活性は主としてCytosolに存在したが、PLP_2活性はcytosolのほかに、膜分画においてもみられた。PIーPLC活性は最大活性発現に5mMの非生理的高農度Caを必要としたが、これに対し、PIP_2ーPLCは50uMの生理的に近い低農度のCaで活性化された。IP3キナ-ゼの細胞内局在性は主にcytosolに認められた。一方、20週齢のWKY及びSHRのcytosolのPIーPLCの活性には有意な差はなかったが、PIP_2ーPLC活性はSHRに有意に亢進していた。20週齢SHR,WKYにおけるIP3キナ-ゼが活性を比較すると、SHRにて優位に高値を示した。SHR心ではβ受容体刺激がGsを通りcAMPを遊離させる系が弱くそのためにPLC活性に対する抑制が低いために、PLC活性が亢進し、さらにIP3キナ-ゼ活性まで亢進しているものと考えられる。
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