研究概要 |
神経芽腫(neuroblastoma;NB)には,早期に発見された限局型の予後良好群と進行型の予後不良群の二群からなっている。また,in viroでの腫瘍の退縮・分化能,in vitroでの分化能を有する特性をもっている。予後の異なる両群のNB細胞の生物学的差異ならびに分化機序の解明は,NBの予後を改善するために重要であると考えられる。 1.臨床サンプルでの検討:早期の発見された限局型(n=8)と進行型(n=4)について,Nーmycの増幅を調べた結果,進行例のみに増幅を認めた。また,モノクロ-ナル抗体での表面膜抗原の検討では,限局型でHLAclassI抗原(HLAーABC,β_2ミクログロブリン)の発現が多いことがわかった。 2.NB細胞株での検討:NB細胞株(n=12)のうち10種にNーmycの増幅過剰発現を認めた。NB細胞株はいずれも進行型NB由来であること,ならびに上記1の結果と合わせて,NーmycがNBの悪性度や進展度と関連していることが示唆された。また,同一患者由来でNーmyc増幅度の異なる二種のクロ-ン株での検討から,NーmyCがNB細胞の増殖能と関連していることも示唆された。 3.NB細胞の分化について:NB細胞株をin vitroで,retinoic acid,ポリプレイン酸,abcAMPで神経細胞に分化させた時,Nーmyc発現量は減少しcーsrc発現量が増加した。一方,bromodeoxyuridineでschwann様細胞へ分化させた時には,Nーmycとcーsrc発現量はともに減少した。NB細胞の分化過程でNーmycとcーsrc両遺伝子が関与していることが示唆された。また,γーinterferonにより形態学的分化を示すNB株(n=5)のうち2種にHLAclassII抗原の発現が誘導された。HLAclassII抗原もNB細胞の分化度と関連していること,および宿主の免疫能と自然治癒・予後との関連が示唆された。
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