研究概要 |
筋萎縮発生メカニズムとその治療に関して、脱神経にともなう健常神経からの発芽機構と神経軸索流の変化,そして廃用にともなうラットヒラメ筋の萎縮について,生理学的,組織学的そして生化学的に検索した。またこれらに対する運動負荷の影響について検討した。 1.脱神経にともなう発芽機構と神経軸索流 脱神経にともない,健常神経線維から側枝発芽と終末発芽の2種の発芽の形態が認められた。これらは脱神経2週後より始まり9週まで続き,4週後に最大となった。脱神経の程度と終末発芽の発現率は高い相関を示したが,側枝発芽との間には関連性は認められなかった。また運動負荷を加えると,終末発芽の発現は抑制された。発芽の発生にあたり,筋から神経線維に誘導する物質を探索した。神経成長因子や神経細胞接着分子とは別の,65kDaの筋で合成された蛋白が確認された。 2.廃用及び運動負荷に対する筋細胞の変化 廃用により筋活動は約2/3以下に減少し,運動負荷にともない,この活動は1.4倍以上に増加した。そのような筋活動のもとで、組織化学による速筋細胞と遅筋細胞の分別では,両筋細胞いずれも同程度に萎縮は起き,タイプによる特異性は認められなかった。20分/日の走行運動を実施すると,萎縮の発現を抑止することが可能であった。超微形態学的には廃用にともない,筋原線維の崩壊,Z帯の断列などの収縮蛋白の変性のみならず,各種の細胞内小器官も傷害していた。また運動終板も変性していた。運動負荷を実施すると,これらの変性像は観察されなかった。
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