研究概要 |
骨巨細胞腫(悪性骨巨細胞腫を含む)及びその類似腫瘍である悪性線維性組織球腫(NFH)の組織起源につにては問題が多い。我々は昭和58年以降この点について研究を続けてきた。骨巨細胞腫に関しての教室の舘らの研究によれば、新鮮材料や培養初期の材料では形態学的に、細胞機能的にみて組織球的な性格が強く示されたが、培養を続けるに従い、光顕的には均一な紡錘型の細胞に変化し、機能的にも組織球的な性格が失われて行く事が示された。今年度は骨巨細胞とMFHを対象として上述の結果をふまえ、更に以下のごとき検討を加えた。1.骨軟部のMFH17例を対象として舘らの研究と同様ポリクロナール抗体(lysozyme,α-antitrypsin,α-l-antichymotrypsin)による免疫化学的な検討、墨汁貧食能の検討、超微細構造の観察を行った。その結果は骨巨細胞腫における結果と同様、やはり初期の材料では組織球的な性格が強くうかがわれたが、継代を重ねるに従いこれらの性格は失われて行ようであった。しかし興味あることは、培養を重ね紡錘型に変化した細胞であっても、電顕的な検討では初代細胞の所見と同様の超微細構造的特徴を保有していた。2.骨巨細胞腫2例、MFH4例について、より厳密なマーカーとされている組織球に対する種々のモノクロナール抗体(Anti-Human Leu-M5,DAKO-Macrophage,ANTI-LEU-6,ANTI-LEU-M3)を用いて免疫組織学的検討を行った。また、これらの材料を細胞の分化促進作用を有すると考えられているVitamin Dやデキサメサゾンなどの薬剤と共に培養し、組織球的な性格が一層誘導されるか否かもあわせて検討した。その結果、やはり新しい材料や培養初期のそれはモノクロナール抗体陽性所見が多く見られるようであったが、継代された材料ではその陽性率は著しく低下していた。又、機能の分化誘導に関しては2例のMFH例においてのみ、墨汁貧食能とモノクロナール抗体陽性頻度が無添加群に比べ高かった。
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