研究概要 |
局所麻酔薬(プロカイン,リドカイン)の麻酔作用を増強する、一群の麻酔増強物質を発見した。麻酔増強効果は、モノカルボン酸イオンに特有の現象であった。 アメリカザリガニの腹側巨大神経と鋏脚神経,ラットの迷走神経と坐骨神経,更にヒト痛覚を対象として調べると、麻酔増強物質存在下では、麻酔発現時間が短縮し、麻酔持続時間が延長した。また、同じ麻酔効果を得るのに必要な麻酔薬濃度は、QQ1WW4RR〜QQ1WW10RRに低下する。麻酔増強の程度は、直鎖型のモノカルボン酸では炭素鎖が長くなるにつれて強くなり、芳香族カルボン酸では更に強力であった。また、ジカルボン酸,スルホル酸等のイオンでは、全く麻酔増強が起らない。 局所麻酔薬の作用を、神経膜に対する広い意味での吸着現象とみて吸着モデルを作り、紫外吸収実験で得られたパラメ-タを利用すると、麻酔発現時間の麻酔薬濃度依存性(電気生理学的実験結果)をよく説明する。電気生理学的実験結果を、このモデルで解析した結果,ザリガニ鋏脚神経では、(1)神経膜に局所麻酔薬分子の吸着サイトが約40μmol/g存在し、(2)プロカインの場合、サイトの45%が占有された時に麻酔が発現することが判明した。また、モノカルボン酸イオンには、(3)神経膜に対する局所麻酔薬分子の吸着率を上げ,脱着率を下げる作用と、(4)麻酔発現に必要な臨界吸着率((2)の45%)を、30〜20%にまで低下させる作用があった。 麻酔増強効果はin vivoの実験系でも顕著であったが、炭素数が3(プロピオン酸)以上の直鎖型カルボン酸では、麻酔持続時間が短縮した。水素クリアランス法を用いた実験の結果,これらのモノカルボン酸は、局所の組織血流量を増大させる作用が大きいことが判明した。
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