本研究課題に関して得られた知見及び研究成果を次にまとめた。 1.腸-肝同時潅流実験系の確立 実験系は既に当研究室において確立されている肝臓の摘出潅流法に基づく方法を用いた。牛洗浄赤血球を含む潅流液は腸間膜動脈より流入され、またリン酸緩衝液を十二指腸上部から盲腸まで流した。試料として幽門静脈に挿入されたカニューレから門脈血は、胆管カニューレから胆汁を、また、肝静脈および盲腸に挿入されたカニューレから潅流液を採取した。潅流系のviabilityとして腸及び肝臓の流出液中の遺漏酵素活性であるGOT(aspartate aminotransferase)とGPT(alanine aminotransferase)の活性が潅流開始直後の値を維持できることを基準として2時間のviabilityを維持できる実験系が確立できた。2.p-ニトロフェノールを腸間膜動脈から投与したときの腸および肝臓での代謝除去能力・抱合体生能力の投与量依存性グルクロン酸および硫酸抱合によって代謝を受けるp-ニトロフェノールをモデル化合物とし、腸間膜動脈からの投与速度を72から900nmole/minの範囲で変えた。小腸での除去率は50から18%に、また、肝臓での除去率は95から68%に低下し、小腸では硫酸抱合の活性が認められなかった。グルクロン酸抱合は両臓器で確認され、そのkm値はほぼ等しかったのに対し、Vmax値は肝臓で小腸の約3倍大きかった。以上の知見から小腸での除去能力の低下(非線形性)は門脈血中未変化体濃度を(投与濃度に対して)非線形に上昇させ、肝臓での代謝物の生成パターンや除去能力に影響を与えていることが示された。3.今後の研究計画p-ニトロフェノールを腸管腔内へ投与濃度をかえて投与し、腸管からの吸収率と小腸での代謝能力の投与濃度依存性について調べ、本年度の知見と比較することによって薬物の流入経路の差が初回通過効果に与える影響を検討する。
|