研究課題/領域番号 |
63510033
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
潮江 宏三 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (60046373)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1990年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1989年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1988年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 英国 / イギリス / ミニアチュア / 細密肖像画 / リムニング / ヒリヤ-ド / 肖像画 / エリザベス女王 / 英国美術史 / 細密画 / 宮廷文化 / マニエリスム / ルネッサンス |
研究概要 |
細密肖像画は、英国において特有に発展してきた絵画ジャンルである。その成立の状況を探ってみると、本来は1520年代のフランス宮延において登場してきたものであるが、その後の展開は専ら英国という風上を地盤に展開してきた。その英国における基盤の確立の段階でバ-ゼルから渡来したハンス・ホルバインが果した役割は大きい。そしてそのことは、もともと人文主義的なサ-クルのなかにいたこの画家が、渡英以後、円形画面の肖像画に関心を示し、フランドルの細密画家に技法を教わるとともに細密肖像画へと展開して行く過程として捉えられる。 ホルバインの死後、このジャンルの製作は、ネ-デルランド系の細密画家たちによって細々と維持されて来たが、それをさらに華かに開花させ、本当の意味で英国独持のジャンルとして確立せしめたのは、英国生まれの画家ニコラス・ヒリヤ-ドであり、エリザベス女王を中心とする宮延文化であった。この小寸の肖像画は、宝石細工の容器にいれられて女王や延臣たちの身につけ、あるいは大切に保管された。半分は絵画として、半分は豪華な装飾品として楽しまれたものである。そして、実は、それゆえに、この肖像画は特別な社学的機能も持たされたのである。延臣は忠節と親愛の情のしるしに女王に肖像を捧げ、女王はあるいは親愛のしるしに、功績の報いとしてこれを与えた。そこには、あたかも騎士が、清純で貞節な婦人を崇めるがごとき、騎士道的恋愛の形式が存在した。ある面で、細密肖像画は、エリザベス体制の確立に大いに寄与した部分があったのである。 本報告書は、その意味を十分熟知したコラス・ヒリヤ-ドの「リムニング芸術論」を本邦で初めて全訳紹介し、その主張するところ、意義等を詳細に解説したものである。
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