建設産業は今まで、その主要な労働力として出稼ぎ労働者と寄せ場日雇労働者に依存してきた。しかし最近では、出稼ぎ労働者は高齢化などにより激減しており、その分だけ寄せ場日雇労働者への依存率を高めつつある。しかも若者の間に、「危険、汚い、きつい労働」への忌避が広まっている現状では、大型プロジェクトを遂行するためには、いやが上にも寄せ場労働者に対する需要は高まらざるをえない。全般的な「人手不足」時代を迎えたこともあって今、「寄せ場」は空前絶後の好景気に沸きかえっている。このような有利な諸条件の中で寄せ場労働者の賃金は高騰し、かつて出稼ぎ労働者との間にあった賃金格差は完全に逆転している。現状では、日雇労働者の賃金相場が、出稼ぎ賃金をリ-ドしている。その結果、高齢の出稼ぎ労働者の中には、企業の雇用条件が悪いために、日雇労働者となって働いているという注目すべきケ-スも表れてきている。 このような状況から、部分的には出稼ぎ労働者と寄せ場労働者との関係が逆転している現象もあるが、基本的な地位関係までも覆しているわけではない。出稼ぎ労働者を主要に雇用している中堅企業と、日雇労働者を主要に雇用している零細企業との間にレベルの格差があるからである。また一般に建設企業は、寄せ場労働者と較べると相対的に安定している、勤勉な出稼ぎ労働者の雇用を優先させ、比較的安定した労働条件を与えるからである。「飯場」は今や、少なくとも表向きには完全に死語と化している。今では、「作業員宿舎」と呼ばれている。その実態もかなり変化している。地価の高騰もあって、大型化すると共に、個室化が進んでいる傾向が見られる。この面でも、出稼ぎ労働者の宿舎個室の改善は目覚ましく、中には冷暖房のついている部屋を用意しているところもある。ちなみに、出稼ぎ労働者の賃金は、需要供給の関係から「東高西低」型となっている。
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