研究概要 |
戦後四十数年間の岐阜県議会議員の社会的属性の分析を中心とした地方議員の利益代表性についての研究を更に発展させて、地方政治を支えあるいは動かしてきた「地方名望家層」-具体的には酒造業を営む地方の名士-の変容に焦点をあてて、岐阜県の政治文化を分析し、社会学的な考察をくわえてきた。 平成元年度の研究は、当初の研究目的に従い、研究計画どおりの方法で実施してきた。前年度の研究において、当初から予想されたとおり、本研究にとって重要な基礎的資料の収集、とくに政治的パトロン関係の資料収集が困難であった為に、本年度の研究は、(1)酒造業者の家系の歴史的調査,(2)酒造業者の家系をたどり、メンバ-の経歴分析のなかでの政治的役職者の調査、(3)政治的パトロン関係の調査の(1)〜(3)の調査の資料整理をおこない、研究結果のまとめをおこなった。 以下、平成元年度の研究結果のまとめを記しておく。大衆政党の出現が地方名望家の政治参加に大きな変化をもたらしたことは周知の事実であるが、岐阜県内においても、政治家の輩出基盤としての酒造業者に変化がみられる。昭和63年度の研究結果のまとめとして、酒造業者の政治参加には三様の関わり方があることを指摘したが、最近の傾向として、自ら政治に参加するのではなく、政治家とパトロン関係をもつことによって政治に参加する方向へと変化がみられる。そして、その変化は政治家の職務の専門化等に対応した政治家自身の特性の変化によるばかりではなく、経営規模の変化や経済成長との関わりのなかでの変化によるものであることを指摘したい。
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