1.在日韓国・朝鮮人は、日本における最大の外国人(籍)集団であるにもかかわらず、その子弟の教育、とりわけ民族教育に対しては、日本の行政当局は積極的な取組みをしているとはいえない。文部省や都道府県レベルの行政文書からも、そのことは明らかである。 2.在日韓国・朝鮮人子弟の8割以上が通っている日本の学校(主として公立学校)のうち、今回調査した大阪府や三重県などー部の学校では1)韓国人を正規の教員に採用、2)韓国・朝鮮籍の子どもに「本名を呼び名のる」運動、3)民族学級を特設して、彼らの祖国の歴史や文化を学習させる、等の試みが熱心になされているが、全体的には民族教育への取組みは低調であるといわざるをえない。 3.一方、在日韓国人(民団系)の経営する民族学校は量的に限られており、その一部はいわゆる「一条校」に移行し、正規の私立学校として運営されている。ところが東京の学校の場合は、近年短期滞在者(主としてビジネスマン)の子弟が増加し、在日韓国人のための民族教育というより、帰国後すぐ韓国の学校に適応できる「韓国人学校」としての運営を望む声が本国(および大使館サイド)から出ており、在日韓国人側との間に一種のコンフリクトが存在する。 4.民族教育をもっとも体系的(幼稚園から大学校まで約200校)に行なってきた朝鮮総連系の学校においても、最近在籍者が減少しているため、3ー4世の時代に対応したカリキュラムの見直しが行なわれている。特に、新国籍法下において、「民族性」を保持する上で学校教育が果たす役割についての再検討が進んでいるようである。 5.これらの研究成果の一部は1988年9月の日本教育学会(於名古屋)で発表、さらに1989年4月ハーバード大学で開催される比較国際教育学会にて発表の予定である。論文は現在2点印刷中である。
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