本研究は、日露非戦論の中でも、従来あまり知られていない人物を対象とした研究であるが、主な活動は内容は以下の通りである。 1 愛媛県宇摩郡土居町の非戦論者安藤正楽については、彼の遺族を訪ね、遺っている史料類を整理し、未刊の論稿や日記等約四百枚ほどのコピーをとり、また彼の県会議員時代(1903〜07年)として活動を調べるために松山市の愛媛県議会事務局議会史編さん室で、県会議事録から彼の発言を全部読んで複写し、彼がすでに部落差別に対して批判的な意見を持っていたことを知った。 2 自由民権思想と非戦論との関係を調べるために、民権運動の盛んであった高知県での二十世紀初頭の動きを調査したが、民権思想と非戦論との積極的な関係は確認できなかった。 3 非戦と早期終戦の論調を発表した「いはらき新聞」主筆佐藤秋蘋については、茨城県立歴史館・茨城新聞社で調査を行い、茨城県立歴史館の桜庭宏氏の協力を得て、佐藤の概略的な年譜を作ることが出来た。また、彼と石川三四郎・田岡嶺雲との関係など、これまであまり知られていないことをかなり知ることができた。 4 日露戦時下のジャーナリズム・論壇などの状況を知るために、東京大学明治文庫、国会図書館で、当時の新聞雑誌類などの調査・史料収集を行い、『万朝報』など関連史料を多数コピーした。 5 著名な人物では、これまで本格的な研究が少ない安部磯雄と柏木義円に関して、特に日露戦時期の活動に限り調べた。 なお、今回の調査研究を踏まえて、さらに視点を広げた研究を続けて、数年後、『日露非戦論の研究』を刊行する予定である。
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