研究概要 |
古墳時代の豪族居館遺跡は40数個所知られる。これらの各居館について,立地,規模,外郭施設,堀の規模,構造,建物構成,建物配置,祭祀遺構,工房,存続期間,関連首長墳などの諸項目にわたって,整理を行った。規模では大まかに,大型,中型,小型に三分され,この規模に対応して諸施設の設置内容も変化がみられる。存続期間は大部分のものがごく短期間に営まれており,群馬県三ツ寺工遺跡のように三時期にわたるようなものは例外的である。建物は掘立柱建物と竪穴住居の両者がみられる。竪穴住居は東日本に多く,ここでは中心部の建物にもみられる。しかし,西日本では中心部は掘立柱建物が採用され,竪穴住居は付属的なものにみられるだけである。同時期に複数の居館が併設されたとみられる大分県小迫辻原遺跡,静岡県大平遺跡,栃木県四斗蒔遺跡は居館と居館との関係をどう理解するかが問題である。とくに、大平遺跡は広範囲に発掘されているので,豪族居館と周辺の集落との関係でも注目される点が多い。つぎに,豪族居館は政治空間を構成したとみられる中心部建物,倉庫,工房などが配置された空間,あるいは祭祀に関連した遺構や空間がある。これらは首長による政治,祭祀,経済行為と密接にかかわったとみられるものである。これらの施設や空間は,のちの律令社会における地方官衛と密接に関係するものと思われる。さらに,以上のような豪族居館の空間構成と建物は,古墳に置かれた家形埴輪の種類と配置とも関連している。家形埴輪は多くの古墳から,新たな資料が追加されいるが,とくに京都府ニゴレ古墳と庵寺山古墳の資料がセットを構成することから良好資部で,重視される。また,外郭施設と関係が深いとみられる棚・門を表現した囲形埴輪も、大阪府長原一ケ塚古墳で良好な資料が出土しており、群馬県赤堀茶臼山古墳の囲形埴輪の性格をより深めることができた。
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