研究概要 |
本研究は、主として1988年度に実施した韓国人日本語学習を対象とする要約文調査の結果について、日本人大学生の要約文デ-タと比較検討して問題の所在を探り、特に要約文の文章構成類型の異同と、誤用表現の傾向についての報告をまとめた。主な成果は次の3点である。 1.要約文における原文の要素の残り方を調べるための尺度として用いた「原文残存認定単位」の分類基準を再検討し、10類23種の単位の規定と適用規則を整理した。韓国人と日本人の6種類の要約文の残存認定作業の結果を、再度新しい単位の基準によって修正し、各単位の残存率について、2種類のX^2検定の結果を求めた。 2.1で得られた検定結果と原文6種の文章構成上の機能とを考えあわせて、残存単位を必須成分,補助成分,その他のものに区別し、それらの単位が原文中の文章構成上の3区分(冒頭部・展開部・結尾部)のどこに位置するかを手がかりにして、特に各要約文における必須成分の有無の3区分の組合わせによって、要約文の構成類型を分類した。その結果,日本人大学生の6種の要約文はいずれも3区分の必須成分を十分に備えるa型とそれに準ずるb型が7割以上を占めるのに対し,韓国人学習者の場合ははるかに少なく,又,日本人と異なる類型が認められた。これは,原文の内容理解が不十分であることを示しており,文章全体の主題や構成を把握する力を指導する必要のあることを意味している。 3.韓国人学習者の要約文の誤用表現を分類して作成したデ-タベ-スを検索して、原文の文章構造と誤用表現の出現傾向について分析した。誤用表現の多少と2の要約文の構成類型との相関を検討したところ、日本人の典型的な類型に近いものの中には、誤用表現の少ないものが多く、反対に誤用表現の多いものの中には、日本人に見られない類型や感想文タイプのものが目立った。読解力と表現力の相関が高いことを示す。
|