従来、国語科教科書の語彙については種々の調査研究が行われてきた。しかし、広く児童の言語能力と学習言語との関連を考察する場合には、国語科教科書ばかりでなく、全教科の教科書における言語使用の実態を明らかにする必要がある。本研究は、このような観点から、現行小学校教科書を調査対象として、そこに使用されている語彙について、教科別・学年別の使用状況を解明しようとするものである。昭和62年度においては、国語・社会・算数・理科についての入力をほぼ終了し、理科については、本文を文単位に分け、文節区切りを施したものを、「小学校教科書教科別語彙資料-理科・本文編」として、63年3月に刊行した。 本年度は、これら前年度の作業を継続するとともに、特に、前記の「小学校教科書教科別語彙資料-理科・本文編」に基づき、全文節を五十音順に配列し、これを「小学校教科書教科別語彙資料-理科・索引編」として、平成元年3月15日に刊行した。今後、国語・社会・算数等の教科についても、本文編・索引編を順次刊行する予定である。 なお、「明治期国語教科書における用語の選定について-否定辞を中心に-」(「国語と国文学」65巻11号) は、主として明治期の国定教科書の用語選定の傾向を解明したもので、現行教科書の語彙研究と関連する研究成果である。
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