本研究では、日本語の研究に力点を置き、特にに日本語の照応形について次のような新知見を得ることができた。 1.日本語には「自分」「自分自身」、「彼自身」の3つの照応形式がある。これらの照応形式の間には、その形態と結びついた次のような特徴が見られる。 (A) (B) (C) 彼 自分 (D) 彼自身 自分自身 「彼」を含む(A)欄の表現は主語指向である必要はないのに対して、「自分」を含む(B)欄の表現は主語指向でなければならない。横軸の(C)欄の要素は長距離束縛が可能であるのに対して、「自身」を含む(D)欄の要素は局所的束縛に限られる。これらの特徴を束縛理論で説明するために、束縛原理そのものの修正、名詞の素性体系の改訂を提案し、それによって一見不規則に見えるマラヤラム語の照応形taanやデンマーク語のsigの特徴をも掟えることができる。 2.GB理論の出現以来約10年の年月が経過しているが、日本においてはGB理論の適切な入門書がない。そこで今後の日本におけるGB理論の活性化、研究人口の増加のために、難解と思われているGB理論の入門書を作ることが急務であると考え、GB理論の入門書を完成した。
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