本研究課題は、その副題が示すように沖縄(琉球)とタイ間の脱国境的交易関係と歴史的に解明するだけではなく、国際関係としての東南アジア地域間秩序を理論的にも構築することをめざすことにあった。もちろん、この研究課題を単年度中に充分満たすことはできないが、上記課題の概要とその基礎となるべき諸資料や関係文献、ならびに専門的知識の提供を通じてひとまずの研究成果をとりまとめることができたといえる。 本研究の目的は、具体的には1.琉球と中国、朝鮮および東南アジア諸国の16・17世紀における交易関係の実証分析、2.琉球王国の政治体制と経済構造の分析3.日本の近代化のプロセスと琉球の統合問題を琉球の民衆意識の動態を通じて検証する、ことである。これらの研究目的に即しておしすすめた研究成果ないし研究実績は、つぎのようなものであり、逐次研究論文として公表する予定となっている。成果の1.16・17世紀のアジア秩序と形成していた朝貢貿易システムのダイナミズムを世界システム理論との関連から解明しえること、事実、2.歴史的資料を通じて世界資本主義システム形成とのかかわりが国際学会でとりあげられつつある現状からして、基礎的分野での理論構築が可能となった。3.琉球王国の政治体制や経済構造は、歴史的な資料解明とともに、広く東南アジアや南太平洋諸国に散在している島しょ国家論として理論的に包摂しうること、4.その際に注目しえるのは都市形成の動態と民家の(労働)移動のダイナミズムにある。5.これら諸点から最終的には南北関係の比較史として包摂的にとりあつかうことができる。以上のような観点が、以下の研究発表に反映されている。しかし、いずれの研究実績も基礎的な領域にとどまっているのであり、さらに研究課題を深化させるためにも次回の助成に期したいと念じている。
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