研究概要 |
西ドイツの経済体制は社会的市場経済と呼ばれ,政府による経済への介入は,市場機構が有効に機能するフレ-ムワ-クをマクロ経済的に設ることに限定されている。(オルド-学派) 70年代の国際通貨危機,原油をはじめとする資源価格の上昇,利子率の高騰は世界不況を惹き起し,西ドイツも例外ではなかった。70年代の社民党政権は,経済をマクロ的にエレトロ-ルするため市場への介入を進めるが失敗に終る。構造危機が明白となった。 80年代初頭政権に復帰したキ民主同盟政府は,社会的市場経済の革新をモット-に,市場の活性化と民間投資促進を目指す政策を打ち出す。この政策は成功し,80年代中葉にはドイツ経済は回復する。 政策転換に伴い,経済成長と構造転換を目指す政府の経済政策のあり方が議論されるようになる。それ故,本研究は,政策論争を概観し,構造変化の分析を目的とする。研究成果は次の3点に集約できる。 1.キ民主同盟のマクロ政策によって,ドイツ経済は回復した。 2.西ドイツは連邦主義国家体制をとっており,地域政策の形で行う州政府のミクロ的経済政策が構造転換に寄与した。 3.マクロ的,ミクロ的経済政築の理論的整合性の問題は解決されずに残った。 これは,社会的市場経済の現念が本来的には市場経済体制のマクロ的フレ-ムワ-クを対象としたものであったからである。
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