1 大戦前夜のロシアの産業・貿易・金融・財政にかかわる基礎的統計資料や文献、並びに西欧諸列強にかかわる基礎的資料、文献の収集と閲読・分析をまず行った。 2 この作業を通じて大戦前夜の時期におけるロシア経済の構造と動態・矛盾の所在を主として貿易と金融の側面から究明し、国際収支=対外決済の問題がロシア資本主義の重大問題として捉えられること、その問題が経済的のみならず外交・軍事問題としていわゆる両海峡問題に収斂・結節していったことを追求した。 3 以上の検討結果を個々の帝国主義国(さしあたり独・仏・英・墺の4か国)との多角的貿易・決済関係という面から整理し、ロシアの対外経済関係とその国際経済上の位置とが、国際政治の動向ともかかわって大戦前夜にいたって特徴的変化とを示しつつあったことを明らかにした。 4 以上の作業に加えて、大戦前夜のヨーロッパ経済全体および各列強の経済動向についても検討を加え、列強の経済的政治的関係に、かの三国協商と独墺同盟の最終的成立や相互対立の激化に示されるところの、新たな連関と対立が生じて言ったことについて、その経済的基礎の一端を解明するとともに大戦勃発の原因解明に一定の見通しを与えることができた。 5 以上の研究成果は一部は後掲の雑誌論文に発表しつつあるが、今後西欧各国の経済史研究を行っている他の研究者と協同して研究成果公開促進費の分配を申請し、学術図書としてまとめて発表して行くことを計画している。
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