本年度の研究計画はデータベースの構築作業までなので、データの解析作業は現在進行中であるが、これまでに解明された諸点を以下に簡潔に要約する。 財務情報、記述情報、画像情報の内容や量については、基本的に変更ないものの、EC第4号指令への調整法である改正民法が1984年1月1日に開始される会計年度から適用された結果、とくに開示される財務情報の均一化がすすんだ。これらによって、これまで企業の自主的な会計方針によって維持されてきた多面的な開示が、制度的規制に適合するレベルまで引き下げられるケースが一部見られた。しかし、厳密に標準化された具体的な規制がないことから、細部の会計処理については依然として企業毎に一様ではなく、専ら読者側の作業によってやっと比較可能性を確保できる程度の非加工データしか開示されないことが多い。 連結会計情報、資金情報、セグメント情報の開示はほぼ一般化している。また付加価値や雇用関係情報などの社会関連情報について言及されることも多く、制度的規制の対象外の情報開示については、記述情報だけでなく画像情報や財務諸表内での開示例も見られた。 第7号、第8号のEC指令の履行にともなって、改正されたばかりの民法に、再三、部分的な改正が行われている。また、それを先取りしたと思われる開示レベルの向上が見られるが、この点は法の改正案に大きく依存しており、議会での審議内容の検討を通じて、その性格と内容を明らかにする必要がある。とくに連結年次決算書については、1988年末に大幅な改正作業が完了しており、その影響について今後継続的な分析が必要である。
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