研究概要 |
(1)財務諸表におけるセグメント情報の開示については,開示していない企業が圧倒的に多かった。しかし,調査年度時にはセグメント情報の開示が義務づけられていなかったことを考えれば,財務諸表本体であると注記であるとを問わず,財務諸表でセグメント情報を開示している会社が20%強もあることを評価すべきであろう。 (2)財務諸表において開示されているセグメント情報をみてみれば,約半数の会社が事業の種類別セグメント情報も所在地別セグメント情報をも開示している。ただし,その情報内容についていえば,営業収益レベルまでの開示にとどまっている会社がほとんどである。 (3)財務諸表以外におけるセグメント情報の開示についていえば,約70%の会社が,セグメント情報を開示している。この理由は,財務諸表以外の箇所は監査の対象とはならないことにあるものと思われる。 (4)財務諸表以外で開示されているセグメント情報の内容についていえば,事業の種類別セグメント情報も所在地別セグメント情報も,財務諸表で開示されている情報よりも充実しているといえる。 (5)セグメント情報は財務諸表で開示されるようとも,財務諸表以外で開示されようとも,利用者側にとっては情報の有用性の点で変わりなく,一方,作成者側にとっては,財務諸表以外の箇所でならば,セグメント情報を積極的に開示しているという意味で制度化に対処できる下地がある程度整っていると考えられる。 本研究は,時間的制約,コスト等の制約のために調査対象とした企業の英文アニュマル・リポ-トにおけるセグメント情報の開示実態は把握したものの,それと当該企業の有価証券報告書における開示実態の比較は行えなかった。また,個人的研究であったために,標本数についても限界であったことは否めない。
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