研究課題/領域番号 |
63540187
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
天文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辻 隆 東京大学, 理学部, 教授 (20011546)
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研究分担者 |
佐藤 英男 東京大学, 理学部, 助手 (40126074)
川上 肇 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 日本学術振興会特別研 (10202029)
乗本 裕慈 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 助手 (50124681)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1990年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1989年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1988年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 高精度分光 / 赤色超巨星 / CCD / フ-リエ変換分光 / 化学組成 / 同位元素組成 / 乱流 / AGB星 / 赤色起巨星 / 高分散分光 / 視線速度 / 同位体組成 / CCD分光観測 / 時系列スペクトル |
研究概要 |
1.高解像CCDによる赤色巨星・超巨星の高分散分光 さきに岡山天体物理観測所のク-デ分光器に導入されたRCA高解像CCDを用いて、従来観測困難であった10等級よりも暗い特異炭素星の観測が可能となり、すでに次のような興味ある結果が得られた: まず、ハロ-種族の炭素星であるCH星について初めて^<12>C/^<13>C比の直接的な観測的研究が可能となった結果、CH星では炭素同位体比はきわめて広い範囲に分布し、^<13>Cが極めて少ないものが見いだされた。これらの結果は、ハロ-形成期における炭素星の進化や元素合成に関し新たなる観測的制約を提起するものである。 さらに最近、IRASにより発見された炭素星でありながらシリケ-ト赤外放射を示す炭素星を含むJ型星の^<12>C/^<13>C比の詳細な検討を行なった。その結果、J型星の^<12>C/^<13>C比は2〜10の範囲に分布しているが、シリケ-ト赤外放射を示す炭素星の^<12>C/^<13>CはJ型星における^<12>C/^<13>C比の分布の上限に位置することが明らかとなった。このことはこれら シリケ-ト赤外放射を示す炭素星の進化過程に関し新たなる観測的制約を与えるものであり、さらにサンプルを増やして確認するための観測を行なう必要がある。 2.FTS分光による赤色巨星・超巨星の高分解能赤外スペクトルの精密定量解析 これらフ-リエ変換分光法(FTS)による高精度の高分解能赤外スペクトルにより、赤色巨星・超巨星の視線速度や線輪郭の高精度測定が可能となった結果、複雑な低温度星の線スペクトルの定量的な精密解析が初めて可能となり,数々の新しい知見が得られた: まず、COの第1倍振動の低励起線は光球からの寄与のみでは説明できない過剰吸収を示すことが明かとなった。これら過剰吸収は光球に対してごく僅かの相対運動を持つ外周層に起因すると考えられ、おそらく高温の彩層中の非均質成分であると考えられる。これはCO、Sio分子等の形成に伴う熱的不安定によりこのような非均質構造が成長するとする理論的予想にたいする観測的検証と考えることができる。次に、光球で形成されたと考えられる COのスペクトル線偏移および線輪郭の精密測定から、このような吸収線にはスペクトル線強度に依存する相対偏移及び0.5km/secに達する非対称性の存在が示された。このことから、従来用いられていた深さによらない等方的でガウス型の乱流スペクトルを仮定してスペクトル線の定量解析を行うことは困難であることが分かる。このため、飽和効果を示さない弱いスペクトル線を用いて化学組成定量解析を行った。その結果、赤色巨星段階にあるM型巨星(M_<bo1>>ー3)では炭素組成はGーK型巨星とほぼ同じでであり、これはいわゆるfirst dredgeーupで説明できる可能性の範囲にあが、AGB段階にあるM型巨星(M_<bo1><ー3)では炭素組成はさらにその半分に減少しており、first及びsecond dredgeーupでは説明できないことが分かった。これらの結果から、赤色巨星段階からAGB星段階への進化過程で再びCNOサイクルによる生成物が多量に星の表面に混合される過程が必要とされることが分かる。
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