研究概要 |
米国・ホ-ムステ-クの太陽ニュ-トリノ測定実験の結果は太陽標準模型に基づく理論値と大きなくい違いを示している。本研究期間中に,我ヶ国の神岡地下実験による太陽ニュ-トリノ測定が報告され新たな局面をむかえている。本研究では,この2つの独立な実験結果は太陽標型の修正では説明不可能であることを示した。これはホ-ムステ-クの測定した太陽ニュ-トリノのエネルギ-領域と神岡地下実験のものとが互いに異なることに基づいている。さらに本研究では,ニュ-トリノが,10^<-3>ー10^<-4>のV程度の質量を持ち物質中でニュ-トリノ振動が起きている場合のみが上記の「太陽ニュ-トリノ問題」を解決できることを示した。この小さなニュ-トリノの質量は我々が大統一理論に基づき10年前に予言したものに一致しており,大統一理論の最初の証拠になると思われる。さらに上記の振動仮説が正しければ,ガリウムを用いる太陽ニュ-トリ測定値が理論値に比べて大幅に小さくなると予言できる。平成2年度には,ソ連と米国の共同研究(SAGE)によるガリウム実験の結果が報告され上の予言と矛盾しないことが示されている。この結果はまだ最終的なものではないので決定的なことは言えないが,今までの結果が正しければ,ニュ-トリノ振動仮説はかなり信頼できるものになる。また平成2年度の後半には原子核の崩壊により放出されたニュ-トリノの中に17keVの質量をもつ重いニュ-トリノが1%程度混っていることが報告された。この重いニュ-トリノと太陽ニュ-トリノとの整合性や太統一理論との整合性について現在検討中である。また,大統一理論と関係の深い宇宙のバリオン数についても研究を行った。特に,現在の宇宙のバリオン数を説明するためにはニュ-トリノの質量に上限が与えられることを示した。
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