研究概要 |
(1)非摂動的弦理論および2次元重力に対する幾何学的アプロ-チ 今年度は弦理論の非摂動論的構造およびその幾何学的背景を研究するうえで重要な出発点になると思われる、行列模型の大N極限に基づいた弦の非摂動的定義の研究に最重点を置いた。 ・そのようにして得られる理論空間を支配する,作用原理の提案を行った。この作用原理は理論の対称性に関する2つの基本的性質である,KP階層性とW∞代数的構造を,宇宙定数とその共役量の作る位相空間の幾何学的対称性として定式化されることを示している。 ・この位相空間上の正準形式を構成することによって,理論空間を決定する基礎方程式を対称性をあからさまな形に示すように定式化することに成功した。 (2)乱雑に分岐する鎖系のベクトルに基づいた研究 行列模型との比較のため,ベクトル模型の大N極限によって粒子理論の非摂動的定義を行った。行列模型の場合と形式的に非常によく似た方法によって系の基礎方程式を築き,さらにその解の性質についても共通する点がいくつかあることを示すと同時に,弦と粒子の本質性な相違も明らかに出来た。 (3)宇宙論におけるスカラ-場の役割 弦理論を含む多くの統一理論において,スカラ-場が重要であることはよく知られている。このことを念頭において,今年度は宇宙定数の小ささを重力場とスカラ-場の結合した系の力学から理解する可能性を研究した。現象論的な立場からは,時間とともに宇宙定数が減少し,現在の観測デ-タと矛盾しないようなシナリオが可能であることを示した。
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