この研究はカイラル対称性がどのような機構によって破れるかを解明することを目的としている。 まずカイラル対称性の破れの機構を調べるために4体フェルミ相互作用を持つ南部模型を再分析した。質量零のフェルミ粒子とその反粒子の間の引力を強くしてゆくと束縛状態ができるが、その束縛状態は必然的に虚質量を持つタキオンになるため真空が不安定になってしまう。この不安定性のためにフェルミオン反フェルミオンの対が真空に凝縮しはじめる。この凝縮によりフェルミ粒子は質量を獲得する。その質量は丁度束縛状態が零質量になるような大きさとなる。すなわち真空が安定性を回復するのに必要なだけの凝縮がおこる。 このカイラル対称性が破れる機構はモデルに依存しない。実際量子色力学のようにゲ-ジ粒子の交換による引力の場合にも同様のことを示すことができる。但しこの場合には連続極限の場の理論として意味を持たせるためには、漸近的自由性を取り入れて結合定数を運動量に依存させて小さくする必要がある。シュウィンガ-・ダイソン方程式に結合定数の運動量依存性を取り入れてフェルミ粒子が質量を獲得することを示した。 対称性の破れを調べる方法として有効ポテンシャルの方法があるが、オ-ダ-パラメ-タ-が複合粒子の場の時には発散の処理の仕方が明確でなかった。特にカイラル対称性の破れがある場合には発散の除去が困難であった。この研究で強い相互作用のみならずヒッグス粒子を導入しておけば、新たな発散が除去できることがわかった。
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