研究概要 |
幾何学的拘束条件が量子多体系に及ぼす効果を多面的に解明するため,大別して下記の3つの具体的問題を取り上げて研究を進め,それぞれについて重要な知見を得た。 1.多孔質体に吸着したヘリウム膜の超流動転移 ゼオライト,バイコ-ルガラス,焼結微粒子等の多孔質物質に吸着した^4Heの系は,その構造が局所的には1次元的(ゼオライト)ないし2次元的(バイコ-ルガラス等)であり,全体としては3次元的である。このため,その超流動転移にも1,2次元から3次元へのクロスオ-バ-が現れることが明らかにされた。特に後者では,吸着膜上に生じる渦間の相互作用に,近距離では2次元的,遠距離では1次元的という興味深い性質が見い出された。 2.2次元メゾスコピック系の量子的伝導現象 大きさ1μm,温度1mK以下のメゾスコピックな系では,電子波の干渉性が系全体的及び,その効果は輪送現象に現れる。多連結導体の磁気抵抗に現れるアハラノフ・ボ-ム効果の系の大きさ依存性,強い不規則性により電子状態の局在化が起きる場合の電気抵抗のエネルギ-依存性を,主として計算機実験の方法により調べた。 3.1次元および2次元における強い相関を持つ電子系 1次元あるいは2次元の格子上で強く相互作用し合う電子系は,その強い相関と低次元性に由来する大きな量子ゆらぎのために,特異な基底状態を実現する可能性がある。電子が次近接に移動できる場合と次近接に交換相互作用が働く場合を数値的対角化の方法によって調べ,RVB状態,ソリトン状態,ダイマ-状態がある条件下で実現することを示した。
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