研究概要 |
1.合金の一方向凝固に関する積分方程式の数値積分して、成長界面の様子をシミュレートするプログラムは完成し、主としてドイツで作動している。界面不安定性が正常分岐型の場合、成長速度の増加に伴い平板界面が不安定化し、小振幅の周期的セル構造から、カスプ状、樹枝状構造へと遷移することが示された。先端分裂による周期変調過程も観測された。ここまでの途中経過はY.Saito,C.Misbah,H.Miiller-KrumbhaarによりNucl,Phys.B5A(1988)に報告された。その後,パリ大の実験グループS,de CheveigneとC.Guthmann等の実験との比較を進めた。実験系は逆分岐を示すが、適切な物理定数を選ぶと、我々のシミュレーションでも履歴を伴う逆分岐を示し、界面形態は実験のそれを完全に再現した。この結果は、1989年春の日本物理学会年会で発表する。論文も準備中である。現在、定数を色々変えて相図を作成し、実験さの比較、又は実験の指針とする予定である。ただ、現在のプログラムでは、形成された界面構造の周期選択という最も関心の高い点に不充分な扱いがあり、現在周期選択のための様々の基本構想を試みている。例えば、制御定数を空間依存させるというのが今の計画である。 2.前項がマクロな扱いだったのに対し、界面張力の分子的起源まで取り入れたミクロな理解のため、格子気体からの結晶成長シミュレーションを行なった。閉じた系では厳密な平衡形を再現した。過飽和度を上げることにより、成長形が多面形→骸晶→樹枝状結晶→フラクタル→コンパクトと移り変ることを見た。それは核形成過程により理解できる。齋藤ー植田により、1988年の物理学会にて発表、論文も投稿中である。フラクタルーコンパクト転移については、より簡単な模型を詳細に解析し、速度選択の一原理を提唱し、上羽氏と連名で発表した。
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