1.圧力ジャンプ法により、硫酸カルシウム懸濁液において、二重緩和を見出した。得られた速い緩和時間は粒子濃度とともに速くなったが、遅い緩和時間はほとんど粒子濃度に依存しなかった。また、前者は結晶成分イオンであるカルシウムイオン濃度の増加とともに遅くなり、後者は無添加の場合、最大値を示した。一方、硫酸イオンの添加では、前者および後者は同様に濃度の増加とともに増大した。他方、リン酸カルシウム懸濁液についても類似の測定を行い、上記に反して単一緩和を得た。得られた緩和時間は結晶成分イオンであるりん酸イオンによって変化し、カルシウムイオンの添加では殆ど変化しなかった。これらの実験結果を解明するために溶液中に懸濁している結晶粒子表面近傍におけるイオンの動的挙動の重要性にかんがみ、ゼーター電位を測定し、何れの場合も塩無添加の場合に最大値を示し、塩添加とともに急激に減少した。現在これらの現象を考慮の上、得られた緩和現象に対してその機構を検討中である。 2.上記の方法により、硫酸ストロンチユム、硫酸バリウム等の懸濁液においても緩和の存在を見出しており、今後の課題として取りあげる予定である。 3.ストップトフロー法により、塩化バリウム水溶液と硫酸ナトリウム水溶液を急速混合することにより、結晶核生成過程に関する高速現象を見出しており、新しい課題として考えている。
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