シナプスセンサーを構成する認識膜と前膜の一体化に関する基礎検討を行った。研究成果の概要は以下の様である。 化学物質の刺激に基づいて情報伝達分子を放出する電気化学システムを構築した(図1)。認識膜はグラシーカーボン電極上にキャストしたditetradecyl phosphate脂質膜である。モデルシナプス前膜として過塩素酸イオン(情報伝達物質のモデルイオン)をドーピングした電解重合ポリピロール膜を用いた。両膜を図1の電気化学システムとして結合することにより、カルシウム(II)の刺激に対応して過塩素酸イオンがモデルシナプス間隙へ定量的に放出されることを確認した(図2)。さらに、間隙へ放出された過塩素酸イオン濃度はその体積を小さくする程高まることがわかった。この結果は、間隙体積を微小化することにより増幅できることを示す。 これらの成果は、シナプスセンサーを構築するうえで重要な基礎知見である。今後、前膜にベシクル(伝達分子を封入)を用いることにより増幅能を高めること、さらにイオンチャンネル能を持つ後膜を組み込むことが必要である。
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