研究概要 |
絶対不斉反応の研究に必要な磁場発生装置を完成することができた。この磁場効果をみる研究においては、化学反応を行わせるために、磁極間にかなりのスペースをとる必要があるが、ほぼその目的に合ったヘルムホルツ型コイルによる電磁石を完成し、必要な電源も設備備品費で購入することができた。不斉合成や不斉変化などを研究するためには、旋光計法によって光学活性を追跡する必要があるが、そのためにまず、不斉を有するジペプチドとCu(II)イオンとの反応を水溶液中で検討した。従来この系では、ジペプチドをHAとすると、CuA,CuH_<ー1>A,CuH_<ー1>A_2,CuH_<ー2>Aなどの化学種が存在することが知られているが、代表者もグリシルーLーロイシンでかつて確認したことがある。しかしながらpH滴定法などによる研究では、CuH_<ー2>A_2型化学種の存在については、研究者の意見がわかれており、旋光計法によって光学活性を追跡することとした。その結果、もしCuH_<ー2>A_2が存在するとすれば、その平衡定数は、β_<12^^ー2>=[CuH_<ー2>A_2]/[Cu^<2+>][H^+]^<-2>[A]^2=10^<-5.52>であり、pH滴定法のCA/C_<Cu>=2/1のデータはよく説明するが、CA/C_<Cu>=1/1のデータについては、pHの高いところで系統的なずれを生じることが判明した。しかし旋光度については、いずれもよく一致した。パラメーターの数を増やせば、一般に計算値は実験値をよく説明するはずであるが、存在しないとしてもpH12近くまでの旋光度がよく一致するということは、存在するとしてもごく僅かであり、実験的に無視できることを示している。不斉反応に磁場がどのような効果をもたらすかについては、今後研究を進めていく予定である。
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