研究概要 |
(2) 金沢市湯涌にあるハクサンアザミの群落とその周辺でアリ類の生態の基礎調査を行ったところ,2亜科9属16種が確認され,そのうち高密度であったのは,ムネアカオオアリ,トビイロケアリ3種,アシナガアリであった。 (2) ハクサンアザミには,アザミヒゲナガアブラムシと他1種が5月後半から7月ごろまで高密度に発生するが,これにはアリ類はattend(随伴)しなかった。 (3) アリ類に対するアザミ食葉性甲虫類の防衛行動をクロヤマアリの野外コロニ-とエゾアカヤマアリの室内飼育コロニ-を使って実験した。ヤマトアザミテントウ,アザミクビホソハムシ,アザミカミナリハムシには化学防衛が認められた。しかし,アザミクビホソハムシの防衛には背中にのせた糞の存在が重要であること,アザミカミナリハムシの化学防衛力はあまり強くないこと,ヤマトアザミテントウの化学防衛力は安定して強力であった。アオカメノコハムシは尾端に乗せた糞を巧みにあやつってアリの攻撃をかわすことができた。キベリトゲトゲは全く無防備であっが潜葉性であるためにアリには攻撃されにくいであろう (4) 渓流ぞいの谷間,道沿い,開けた場所など異なる環境にはえているハクサンアザミに対する各種甲虫類の分布を調べたところ,ヤマトアザミテントウは谷間に限って分布するが,アザミカミナリハムシ,アオカメノコハムシは様々なハビタ-トを利用できることがわかった。 (5) ハクサンアザミの植物体上でのアリの密度は低かったこと,また甲虫類の化学防衛できるので,アリがギルド構造に及ぼす効果は少なかった
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