研究概要 |
広島県江田島山火事跡地紛て自然再生植物群落内にA区、人為的再生植生群落内にB区を設置した。両区において1988年8月23日から1989年8月4日まで樹模流量、林内雨量を、降雨毎に測定し、またA区とB区の間で林外雨量を一降雨毎に測定し、これらの雨水中の努類濃度の分析を行った。エアロゾルと溶脱による塩類インプットの区分は、一部人為再生群落内のC区で行った。樹木に大型ビニ-ル袋をかぶせ、エアロゾルの植物体への付着を防ぐ個体(晴天時はビニ-ル袋をかぶせ、雨の降る直前にこれを剥がした)と、ビニ-ル袋をかぶせない個体のそれぞれの樹幹流量、林内雨量を測定し、これら雨水中の塩類量を求めた。 年降水量を100%とすると樹幹流はA区では11.7%、B区では5.4%、林内雨はA区では72%、B区では83.3%となり結局、遮断量はA区では16.3%、B区では7.3%となった。地上部現存量はB区でやや大きいにも関わらず、A区の方がB区よりも二倍以上の遮断能力を持つという事になる。一方、塩域の動態をA区、B区について比較すると、林床への供給量はCa,K,Mgでは、A区の方がB区よりも大きかったが、Naに関してはB区の方がA区よりも約1.6倍大きかった。塩類インプットの区分の結果をみると、Ca,Mg,Kは、Naに比べて一般に樹体濃度は高く、しかも広葉樹の方が松よりもこれらの塩類濃度が高いため、樹体からの塩類溶脱が自然林で盛んに行われてていると思われる。溶脱しにくいNaにおいてB区の方で林床供給量が多いことは、エアロゾルによる塩類インプットはB区の方が多いといえる。しかし、植生にとって主要な元素である、Ca,K,Mgに関してはエアロゾルによるインプットは、自然林の方が少なくとも、樹体からの溶脱を含めたインプットは大きく、塩類の循環が活発に行われていることが予測された。このように自然再生植物群落は、クロマツ人工群落に比べ水循環、塩類循環の機能は優れていると思われる。
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