研究概要 |
細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)の発生過程における糖結合性タンパク質(レクチン)であるdiscoidinI,IIがそれぞれどのような役割をはたしているか明らかにする目的で、discoidinI,IIに対する特異的単クロ-ン性抗体を調製し、その結合特異性をウエスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、ELISA法を用いて解析した。discoidinIに対する1E7,5C7,3F9では、それぞれ1E7抗体はdiscoidinI,IIの両方の変性、未変性の抗原に結合すること、5C7抗体は変性したdiscoidinIのみに結合し、3F9抗体は未変性のdiscoidinのみに結合することが分かった。また4B3抗体は変性したdiscoidinIIのみに結合することが分かった。 その後さらに結合特異性を解析して、native-gel、urea-gel、SDS-gelにより抗原を電気泳動して、ウエスタンブロッティングをおこなって解析したところ、さらに結合特異性があきらかになった。即ち、5C7と3G4抗体はdiscoidinIの多量体に結合すること、1E7抗体は単量体、多量体の両方に結合すること、3F9抗体は単量体のみに結合することが明らかになった。そこでこのような結合特異性を踏まえて、蛍光抗体法と免疫電顕法を用いて、粘菌子実体と細胞内のdiscoidinのIとIIの分布を調べた。 細胞内分布については、多量体を認識する抗体(5C7,3G4)が多ラメラ体のみに局在すること、他方、単量体のみに結合する3F9抗体は細胞質に局在し、多ラメラ体には存在しないことがわかった。この事実は多量体が多ラメラ体を特異的に認識する仕組みを持つことを示唆するものであり、また多量体が未消化のえさである細菌の細胞壁を細胞外に放出する働きに関与することも示唆するものである。
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