研究概要 |
緑色鞭毛藻の宿主は,多くの点でGymnodiniumに類似した形態を有しているが,細胞のまわりに微少な鱗片を有することから,新属新種とし,Lepidodinium viride と命名した。鱗片の構造は,従来渦鞭毛藻のOxyvrhismarina,Heterocapsa spp,及びKatodinium rotundotumのそれより複雑でバスケット状の構造を有していた。本種の微細構造は多くの点で典型的な渦鞭毛藻の特性を有していたが,縦鞭毛と横鞭毛のつけねの間にみられる細胞質突起の微細構造,共生藻近くにみられる単一膜に包まれ,膜状シ-トを含有した小体,横鞭毛を囲む網状の付属物等は他の渦鞭毛藻には決してみられない構造であった。細胞膜の構造は基本的には他の渦鞭毛藻でみられる構造と類似していたが,薄い膜状のシ-トがthecal vesicle内にみられた。なお,藻体内の芝生藻由来の色素体は,細胞が活発に動いている時は網状になっているが,古くなると分断され,多数の球状の色素体になっていくことが判明した。 内部共生藻由来色素体にはカロチノイド色素として,ネオキサンチン,ビオラキサンチン,アンテラキサンチン及びβーカロチンの他,2種の未同定の色素が確認された。1つはreteution timeにおいてルテインと類似するが,吸収スペクトルはルテインのそれと異なる。もう一方は,量的には極めて少いが、ゼアキサンチンではないかと思われる。芝生藻はクロロフィルa,bをもつこと,同化産物がデンプンであることから,緑藻あるいはプラシノ藻由来と考えられるが,今回の結果から,カロチノイド色素として緑藻に普通に多量にみられるルテインがなく,ゼアキサンチンがあること,このようなカロチノイド組成を示すプラシノ藻が報告されていることをふまえると,芝生藻はプラシノ藻由来と考えた方が妥当と思われる。
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