研究概要 |
1.パピリオクロ-ムの構造と合成に関する研究.(1)IIa,IIbに関して,そのNーβーアラニルドーパアミン(NBAD)のβ炭素のまわりの立体構造を調べ,分解産物のNーβーアラニルノルエピネフリン(NBANE)のCD曲線がIIa,IIbともにプラスにかたよっていることを明らかにした。(2)IIa,IIbの生合成に関して,アゲハ蛹期間中のNBAD,Nーアセチルドーパアミン(NADA)の量的変化を調べ,NADAグルコシドを確認し,またNBAD合成活性が翅で高いことを明らかにした。(3)〓ーキヌレニンとNBADとをチロジナ-ゼとインキュベイトすると,パピリオクロ-ムIIa,IIbが合成されること,およびこのようにして合成されたIIa,IIbは天然のものと同様の光学活性を有することを確認した。(4)NBADおよびNBANEにチロジナ-ゼを作用させ,その際の吸収スペクトルの変化と酸素消費の測定,サイクリックボルタンメトリ分析を行った。その結果,NBAD,NBANEともに黒色メラニンを形成せず,橙色になることを確認した。これを蝶のA型赤色色素と比較した。 2.クチクラタンパク質の架橋構造に関する研究。(1)キイロショウジョウバエのy,b,eの三つの突然変異系統の囲蛹殼のクチクラを用いて,その4%塩酸メタノ-ル抽出分画が架橋構造の研究に適した材料であることをβーアラニン,ケトカテコ-ル,酢酸の定量から確認した。この抽出分画において,βーアラニンとケトカテコ-ルとの量的に逆の関係,またβーアラニンと酢酸との量的に逆の関係が確認された。(2)アゲハの蛹期間中のβーアラニンを遊離型,70%エタノ-ル可溶性結合型,70%エタノ-ル不溶性塩酸メタノ-ル可溶型,1NNaOH可溶型,NaOH不溶性残渣に分けて定量,合わせてグルコサミン,タンパク質も定量した。その結果,クチクラの前硬化状態ですでにβーアラニンが塩酸メタノ-ル分画に存在することが分った。
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