研究概要 |
筋発生において、液性因子が重要な働きを果たしているであろうことは,古くから指摘されてきたが,筋原細胞培養系でその活性が調べられてきた多くの培養液成分のうち,ニワトリ胚抽出液(EE)は,筋発生を促進する作用が最も著明なものの一つとして古くから知られてきたものである。 我々は,筋発生の制御に関与する液性成分の研究を進める中で,このEEの成分に注目し,その有効因子を精製し,その性質を調べることを試みた。我々は既に1982年に,EEから筋細胞の増殖と分化に必須な因子に一つを精製することに成功し,トランスフェリンであることを示したが,同時にEE中には他の強力な有効成分が存在するであろうことが示唆されていた。 本研究の目的は,上に述べたようなEE中に存在し,筋原細胞の増殖と分化の制御に関与すると考えられる未知の因子(複数存在する可能性が高いと思われた)を精製し,その作用機序を明らかにすることであった。我々は,ヘパリンアフィニティ-クロマトグラフィ-を利用することにより,一つの有効成分をかなりの純度で精製することに成功し,分子量15,000〜17,000の単一ペプチドからなり,塩基性繊維芽細胞成長因子と似たものであることを示した。この精製標品は1ng/ml程度の濃度で鳥類初代培養筋芽細胞の増殖を促進し,結果として細胞融合,分化を遅延させた。この成分は高純度に精製されたとは言え,若干の不純物を含むことが明らかにされ,さらに精製を進めることを試みられたが,精製度を高めることはできなかった。 また,上記の因子のアッセイ系の検討が並行して行われ,ウズラ筋原細胞株NIBB/QMの培養が行われた。その結果,細胞密度等を制御することにより,利用可能であろうことが示唆された。
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