研究概要 |
1.研究期間を通じて,既存資料の整理検討に重点をおき,所期の目的をおおむね達成することができた。ただし、日本のチビゴミムシ相の解析に不可欠な台湾や中国本土の資料が,この期間中にある程度えられたので,その研究を優先させた結果,研究の後まわしになったグル-プがいくつかある.これらに関する研究成果は,平成3年度末ごろまでに公表できることと期待している. 2.当初の計画どおり,野外調査は知見の空白を埋めるための補足的なものにとどめた.おもな成果は,(1)北海道道北地方のチビゴミムシ相が初めて解明され,(2)八溝山地などのようすがほぼ明らかになり,(3)鈴鹿山地の特産だと考えられていていた属の分布域が北陸地方までひろがった結果,近縁属との系統関係,ひいては朝鮮半島のものとの関係が明らかになり,(4)日本南西部に広く分布するケムネチビゴミムシ属と台湾の高山に分布するものとの関係が解明されて,その由来を中国大陸東部とする假説がかなりの確度をもって証明され,(5)東北地方と北海道南西部に分布するキタメクラチビゴミムシ属の近縁属が,台湾北部の高山で発見されたことによって,これらの分布状態が遺存的であると認められた.さらに,(6)中国における雄の発見によって,これまで由来のはっきりしなかったヒゲナガチビゴミムシは,明らかにアジア東部起源のものであること,(7)同じく中国で初めて見つかったメクラチビゴミムシの研究から,日本のイソチビゴミムシの場合と同様に,この種はニュ-ジ-ランドとの関係が濃く,日本を含む西太平洋地域のチビゴミムシ相は,中国起源だと考えてよいことがわかった. 3.この研究には,今後の展開の余地がまだ相当に残されているが,そのためには,日本に隣接する地域,とくに中国大陸のチビゴミムシ相の解明が必要不可欠であり,近い將来における共同研究が望まれる.
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