研究概要 |
西南日本内帯に広く分布する白亜紀後期〜古第三紀初期の花崗岩類を対象として,断層周辺に分布する花崗岩体と顕著な断層が存在しない花崗岩体から定方位岩石試料を採取し,試料に認められる微小変形構造を走査型電子顕微鏡(SEM)と光学顕微鏡を用いて観察した.SEM観察では試料の同一場所において,2次電子像,燐光像,反射電子像の3種類の像を観察した.研究対象とした花崗岩体は,(1)阿寺断層中央部周辺,および屏風山断層と恵那山断層周辺に分布する苗木ー上松花崗岩と伊奈川花崗岩,(2)顕著な断層が認められ岐阜県東加茂郡足助町周辺地域の伊奈川花崗岩,および(3)瀬戸内海北木島や大島,山陰萩地域に分布する広島花崗岩である. SEMと光学顕微鏡での観察結果,花崗岩類には多種多様な微小変形構造が認められた.これらの変形構造を,規模とそれが認められる場所によって,次の3種類に分類した;粒間変形構造ー複数の鉱物結晶に連続して認められるもの,粒界変形構造ー結晶の粒界に認められるもの,および粒内変形構造ー単一結晶内だけに認められ粒界を越えて連続しないもの,である.粒間変形構造として,微角礫,癒合帯,鉱物充填割れ目,粒間割れ目が認められる.粒界変形構造では,隣り合う結晶の鉱物組合わせの違いによって,出現する変形構造の種類や頻度が異なるが,癒合粒界,鉱物充填粒界,粒界割れ目,鋸歯状粒界,ミルメカイトが存在する.粒内変形構造は,鉱物種によって出現している変形構造の種類が異なり,石英には癒合割れ目,亀甲状割れ目が認められ,長石には微小断層,へき開割れ目,キンク帯,滑り双晶などが認められる.両方の鉱物に共通するものとして,粒内割れ目や波動消光がある.黒雲母にはへき開割れ目,ベンド,へき開段,フィッシュ,キンク帯がある.SEM反射電子像は鉱物の種類の違いを明瞭に示すため,粒界変形構造の観察に最適である.SEM燐光像では,光学顕微鏡では観察不可能な石英の累帯構造や,ミルメカイトや鋸歯状粒界など粒界での微細構造を観察できる.
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