研究概要 |
研究の結果,ペルム紀の全時代を通して,北極海域における海生無脊椎動物群(主にスピッツベルゲンのものを検討)とテ-チス海域におけるそれら(日本・中国・東南アジア・中央アジア・西アジア・南ヨ-ロッパのものを比較検討)とは基本的に異っていることが明らかになった。 北極海域,即ちフランクリニアン海及びその周辺域(ノバヤゼムリア;スピッツベルゲン・グリ-ンランド・北カナダ島嶼部など)における生物群は,ロシア台地・ウラル海,東シベリア海の各地域のそれらとほぼ共通である,さらに,後期ペルム紀に北ヨ-ロッパに存在したゼックシュタイン海産のものと強い類縁性を示している。一方,テ-チス海域は基本的に三つの動物区に分けられる。即ち,北からアンガラテ-チス区,中部テ-チス区,ゴンドワナテ-チス区である。このうち北極海域型の動物群を多く混在するのはアンガラテ-チス区であり,中部テ-チス区においては二枚貝の一部を除きほとんど北極海域型のものを含まない。ゴンドワナテ-チス区の動物群は,属単位で北極海域型のものと共通するが,種単位では異っている。このことは,一部共通の祖先を持つものが存在すること,および両海域が中部テ-チス区に比べて冷涼な環境にあったことを示しているものと思われる。 時代的にみると,北極海域とテ-チス海域の動物群の相異は,前期ペルム紀よりも後期ペルム紀において著るしくなるといえる。 今後の問題としては,北極海域型とテ-チス海域型の動物群が混在する東アジア,即ち中国北部,東北部,ソビエト沿海州地域,日本の東北地方,飛騨外縁帯,西南日本内帯などにおけるより詳細な検討が必要であろう。
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