研究概要 |
本科学研究の予算が補欠採用として初年度の秋に認められたため,研究の進行がやや遅れているけれども,これまでに次の成果が得られた。 1.岩石の変形実験の結果を用いて日本列島下の強度断面を作製し,島孤に特徴的なテクトニクス・地震の分布などがいかに合理的に説明できるかを示した。これによって,岩石のレオロジ-と地球科学の他分野の研究との関連が明らかになった。 2.室温下での岩塩の剪断変形実験によって,地震の起こる深さは塑性変形の卓越する準延性領域にまで及んでいること,及び断層岩の中でもS-Cユイロナイトとアルトラマイロナイトがこの準延性領域で形成された可能性が高いことが示された(Shimamoto,1989)。本研究によって,地震の化石とも言うべきシュ-ドタキライトが上記断面岩と共存することが,オ-ストラリア中央部のマックドネル山地とマスグレ-ブ山地および北米メイン州のポ-トランドで確認され,実験結果に基づく予測が裏付けられた。最終報告書を提出するまでには,それらの断層岩野変形微細組織を解析する予定である。 3.中部日本の糸-静線沿いに形成された鳳凰マイロナイトのカソ-ドルミネッセンス像を観察し,一見塑性変形のみによって形成されたように見える伸長した石英粒の一部が,水からの析出によって形成された可能性が高いことを示した。これは低温型マイロナイトの形成の過程で圧力溶液が重要であることを初めて示したものであり,脆性から延性に至る中間領域のレオロジ-を確立する上で極めて重要な結果である。 4.鳳凰マイロナイト中の変形した石英を透過電顕下で観察し,低温型塑性変形に特徴的な転位構造を見い出した。また,転位密度と粒径の関係は,高温型塑性変形に対する実験結果と異なっており,両者の関係を調べることによって塑性変形のタイプが認定できる可能性が示された。
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