研究概要 |
研究対象とした鳳翩山花崗岩体は複合岩体をなし,主に(1)BiーHb花崗閃緑岩,(2)HbーBi花崗岩,(3)Bi花崗岩の3つの岩相に分けられる。これらの花崗岩マグマ活動に伴う流体の挙動を知る目的で,岩体内での初生流体包有物の空間分布を検討し,アパタイトと黒雲田中のClとFの含有量を測定した。流体包有物は,石英中に主に観察され,その構成相により,(1)タイプIー気相に富む(G+L),(2)タイプIIー液相に富む(L+G),(3)タイプIIIー多相包有物(L+S+G)に分けられる。流体包有物は通常10μ以下で,その大半は5μ以下であり,その形状は卵型,四角形状の比較的規則正しいものから不規則不定形のものまで変化に富む。これら初生流体包有物を岩相所にその相構成比(Vol%)を測定した結果,同一の岩体であっても相構成比はバラつき,更にはそれらの分布と岩相差との間には有意な差は認められない。又,本岩体を通してみられる重要な事実は,同一石英粒内でタイプIとIIIが,しばしば共存することであり,このことは流体包有物のトラッピングの際,流体がboilirgしていたことを示す。マグマから流体が分離する特,低圧の方がClは効果的流体相に分配される。そのような流体が,圧力減少などによりboilingが起ると,よりsalineな流体が生じる。その結果として,タイプIIIの多相包有物が普遍的にみられるようになる。又,このような高塩濃度流体は,アパタイトや黒雲母の化学組成に反映しており,両相にはClが,更にアパタイトにはFが濃集している。又,アパタイトおよび黒雲母中のClとFの含有量は,上記の3つの岩相の間で有意な差はみられない。以上のべたような高塩濃度流体およびClとF含有量の高いアパタイトと黒雲母の存在は,本岩体に多数のベ-ス・メタル鉱化作用を隨伴することと調和的である。
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