研究概要 |
互いに成因的に異なると考えられる西南日本九州外帯と東北日本南部北上山地の代表的な花崗岩質岩体に含まれる暗色包有物の産状,鉱物学的性質,岩石学的性質,地球化学的性質を明らかにした。 西南日本外帯の南帯のSータイプ花崗岩質岩石中の暗色包有物は,主に多量の堆積岩源ゼノリスと少量の斑状組織をもったオ-トリスからなる。また,北帯のIータイプ花崗岩質岩石中の暗色包有物は,堆積岩源ゼノリスとやや斑状の組織をもったオ-トリスからなる。一方,南部北上山地のIータイプ花崗岩質岩石中の暗色包有物は主に粒状組織をもったオ-トリスと少量の火成岩源・堆積岩源ゼノリスからなる。 西南日本外帯の花崗岩質岩石中のオ-トリスは,主に中粒〜細粒,黒雲母と斜長石に富む石英斑れい岩質〜花崗閃緑岩質岩石からなる。一方,南部北上山地の花崗岩質岩石中のオ-トリスは,主に粗粒〜中粒,角閃石と斜長石に富む斑れい岩質〜石英閃緑岩質岩石からなる。 花崗岩質岩体中のオ-トリスの化学組成は,一般に母岩よりもかなり塩基性であるが,オ-トリスから母岩に向かっての組成変化は,個々の花崗岩質岩体において一本の規則的なトレンドを示す。 花崗岩質岩体のオ-トリス中のマフィック鉱物ー黒雲母・角閃石・単斜輝石ーの化学組成は,母岩中のものと類以している。オ-トリス中の斜長石の化学組成は,母岩中のものより塩基性のものがある。花崗岩体の成因的な履歴は,オ-トリス中の角閃石と斜長石の累帯構造と化学組成に残されていることがわかった。 本研究の過程で,鹿児島県日置花崗閃緑岩体中に斑れい岩岩脈が発見され,岩体中のオ-トリスの起源を明らかにする上で,重要であることがわかった。
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