本研究の目的は、海洋と島弧のマントルを比較研究することであるが、海洋に関してはハワイの試料を、島弧に関しては四国の新宮村馬立の試料を使いマントル物質を調べた。ハワイの岩石は、圧力に変化があり、かんらん岩でざくろ石とスピネルが共存する岩石と斜長石とスピネルの共存する岩石を使い温度・圧力を見積もった。それらの温度・圧力は、740℃・3キロバ-ルと1070℃・20キロバ-ルであった。このデ-タはハワイの地下は非常に高い地温勾配であり、マントルプリュ-ムにより地下が暖められていることによる。深い部分にはざくろ石かんらん岩があり、地表近くに斜長石かんらん岩が存在する。輝石を多く含んだ岩石はかんらん岩中にポケット状に存在し、ざくろ石を含むものとスピネルを含むものがある。前者が深部に存在し、後者は比較的浅い部分に存在するが、リソスフェア-が移動するにつれ温度低下を起こすため多くの岩石でスピネルがざくろ石に変化する組織が観察される。 馬立の試料には、超塩基性岩から塩基性岩までいろいろな岩石種が存在するが、温度・圧力に殆ど差はなく温度は900℃前後で圧力は9キロバ-ルである。これはスピネルレルゾライト相に属し、かんらん石と斜長石を含んだはんれい岩では、スピネルと輝石からなる反応帯ができている。馬立のアルカリ岩は周囲の変成岩と同じ岩石も取り込んでいるが、変成岩の下にグラニュライとスピネルを含んだかんらん岩が存在する。変はんれい岩が多く存在することと、かんらん岩中に塩基性岩の脈がしばしば存在することから、アルカリ岩の活動以前のマグマ活動によってできたキュムレイトや塩基性岩の脈がグラニュライトやかんらん岩中に多く存在しているものと考えられる。
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