研究概要 |
極めて小さいJosephson接合では,接合容量が小さいので,静電エネルギ-と結合エネルギ-とが同程度の大きさになる。そのために通常の大きさの接合とは異なる特性が出現することが予測されていた。近年,常伝導金属間の微細トンネル接合についても同様の興味ある現象(単一電子トンネル効果)が報告されている。一方絶縁物基板上に金属を島状に真空蒸着した島構造金属薄膜は,十分微細なトンネル接合の直列並列の集合と見なすことが出来る。本報告では白金(Pt)等を蒸着した島構造金属薄膜を用いて,単一電子トンネル効果を観測することを目的とした。残念ながら最終目的は達せられなかったが,得られた成果を次に示す。 1.島構造金属薄膜は超高真空装置(2×10^<-5>Pa)を用いて,十分清浄化したガラスまたは溶融石英基板上に真空蒸着により作製した。蒸着金属としては,数種類の高融点金属を用いたが,白金(Pt)の場合に最もよい実験結果が得られた。先ず外部接続用の電極およびバイアス電圧印加用の電極(Cr/Au)を蒸着し,(50×50)μmの素子面積を形成した。島構造状態は,蒸着条件,基板状態によってきまる。例えばPtを0.03nm/sの蒸着速度で,平均膜厚1.5〜2.0nm程度まで蒸着すると,面抵抗値は,10KΩ〜100KΩ_□となり,平均直径5〜7nmの島粒子が1.0〜1.5nmの間隔で散在した島構造となる事が電子顕微鏡の観測から判明した。この構造で単一電子トンネル効果の観測を期待する事は可能である。薄膜の平均膜厚は,水晶膜厚計と蒸着中に外部から測定する薄膜の抵抗値によって制御した。なお蒸着中は電極の方向に1〜5KV/cmの電界を印加した。 2.1.で作製した島構造金属薄膜素子を測定容器にマウントして液体He中で特性を測定した結果,数KV/cmのバイアス電界を印加した場合数個の素子について抵抗値の変化が観測されたが,再現性がなく,残念ながら最終目的である単一電子トンネル効果を確認するに至らなかった。
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