研究概要 |
本研究の実施計画は1)光誘起スペクトル測定用フーリエ干渉分光器の試作と、2)測定および解析よりなっている。この計画に沿って分光器を試作、マイクロコンピューター制御による測定系を開発、FFTを用いた解析システムを開発し、それらを用いての測定より次の実績を上げた。 1)三枚のビームスプリッター(6.25、12.5、25μmのマイラーフィルム)の使用で20〜400cm^<-1>の波数領域を1cm^<-1>以下の分解能で測定可能であることが水蒸気の吸収スペクトルから確められた。 2)分光器の性能評価と目的遂行のために以下の物性測定を行った。 2-a)Si平板の干渉効果を測定し、1)の結果を確めるとともに、Siの屈折率を50〜400cm^<-1>で求めた。値は3.45(室温)で波数に対して一定である 2-b)高純度Geを融点近傍の温度から急冷すると、いくつかの浅いアクセプター準位ができることが知られている。光励起下の遠赤外スペクトル測定の一環として、この急冷Geの光伝導スペクトルを測定した。銀を含む急冷Geが良好な光伝導型赤外検知器となり得ることが解った。 2-c)連続フロー型の液体ヘリウムクライオスタットを一部改良して、Si,Ge,ポリチオフェン等を試料として、光励起下の遠赤外吸収スペクトルの測定を行った。結果は、クライオスタットの性能に問題があり、試料温度が約30K程度にしか冷却できず、電子準位に関する知見は得られなかった。しかし、1),2-a,-b)の測定と合せて、試料温度を約10K程度に冷却すれば光励起下のスペクトルの測定が十分可能であることが確められた。すなわち、上記スペクトルを測定するには十分明るい分光器であり、励起光の照射による変化分だけの変調信号を観測できるものであることが確められた。今後研究を続け、半導体や一次元ポリマーの電子準位、特に、励起準位に関する知見を得る予定である。
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