研究概要 |
有機色素であるエオシンY,エリトロシンBを含むポリビニ-ルアルコ-ル(PVA)およびゼラチンの高分子膜を用いた縮退千波混合による位相共役波の発生実験において、以下のことが明らかになった。 1.同じ色素をゼラチンとPVAに分散させた場合,PVAの方が色素が退色せずに位相共役波を発生し続ける時間が数倍からひと桁程度長くなる。このことは、高分子材料によって分散された色素の耐光性を大幅に改良できることを意味している。 2.色素含有高分子膜から発生する位相共役波には,時間応答の速い飽和吸収成分と記録特性をもつホログラフィ成分があるが,PZTを用いてプロ-グ光の位相を時間的に変動することにより,ホログラフィ成分の発達を抑制して飽和吸収成分のみを得ることができた。この結果,位相共役波強度は時間とともに増加・減少するが,飽和吸収成分は時間がたつにつれ指数関数的に減衰することがわかった。 3.2つの成分が完全に分離できたため,2つの成分間の位相差を3つの実験デ-タ(位相共役波の全強度,プロ-ブ光の遮断によって得られるホログラフィ成分、ホログラフィ成分の発達を抑制して得られる純粋な飽和吸収成分)から計算によって求めることができた。その結果,位相共役波が時間とともに変動するのは,ゆっくり発達してくるホログラフィ成分が飽和吸収成分と干渉して強め合ったり弱め合ったりするためであることがわかった。 ここで得られた知見は,色素含有高分子膜を位相共役波を発生しかつホログラムによる画像の記録ができる新しい素子と考えこれを改良していく立場から,非常に重要であると考えられる。
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