研究概要 |
本研究は、高磁界で高電流密度を維持できる複合多芯超電導線を設計するための基礎デ-タを得るため、極細多芯超電導のフィラメント径およびフィラメント間隔とピンニング力の関係などについて実験的検討を行ない、物性論的な側面から複合多芯線の電磁特性を解析することを目的として計画を進めてきた。しかしながら、高電流容量の多芯線に関する臨界電流密度の温度特性を測定する実験装置の製作で多くの問題に遭遇し、システムの完成に時間を要した。以下に、多芯線の臨界電流密度の温度依存性を得るために開発した測定系および試料温度可変装置(断熱セル)、さらに物性論的に行なった層状超電導体の臨界磁場に対する結果を示す。 1.パルス法臨界電流測定装置:本装置は,超電導体に流す電流をスイ-プし,常伝導転移した際に生ずる発生電圧を検知すると共に,試料保護のため電流スイ-ブを停止し,測定系をリセット状態に復帰させる。装置の性能として、最大電流20A、最小スイ-プ時間1秒、最小検出電圧100μVである。本装置を使用し、NbTi多芯線のコイル状試料を測定した結果、各磁場での臨界電流値Icを0.2秒以上の時間をかけてスイ-プした場合、準静的な測定によって得た値と一致する。 2.断熱セル:本装置は、液体ヘリウム中で真空断熱したホルダ-部(銅製)に試料をセットし、同一ホルダ-部に巻かれたヒ-タ-によって温度可変するものである。4.2Kから20Kまでの温度制御は可能となったが、試料に数A程度の電流を流した場合、温度上昇が見られ、なお改善の余地がある。 3.層状超電導体の臨界磁場:多芯線構造を簡略化し、層状超電導体として物性論的に取り扱い、臨界磁場の角度依存性の解析を行なった。
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